電話が怖い

電話が苦手でしょうがない

コロナ禍以降、ありがたいことに、クライアントや社内メンバーとのやり取りの多くがチャットに移行した。

私は静かに、しかし心からこの「強制デジタルトランスフォーメーション」に感謝している。私は電話がとにかく苦手だから。


「13時にお電話します」が怖い

「午後13時にお電話します」と言われた瞬間、その日が半分終わる。

いや、始まる前から終わっている。その13時という予定が、私の心に重くのしかかる。

「来るぞ…13時が……」と、ずっと時計を横目に作業が手につかない。

突然の電話もまた恐怖だ。

「今出られないんだが?」というタイミングに限って、スマホが震える。

「なんだろう…面倒なやつかも」と思いつつも、出ないわけにもいかない。

まあ、たまに忙しいフリをして出ないこともあるが、後回しにするのも地獄だ。


電話が嫌な理由、シンプルにして地獄

  1. 時間を奪う 今やってる作業を一旦停止し、話し手のプロジェクトを脳内から引っ張り出し、 状況を瞬時に整理し、指先ではプロジェクトフォルダやらスケジュールやら、 開けるだけの資料を開く。 会話とメモを同時進行しながら、地獄のマルチタスクが始まる。
  2. 要件が大抵、ろくでもない
    • 「原稿が遅れていて…いつまで待てますか?」
    • 「社内の都合で●ページだけ先にいただけないですか…」
    • 「ちょっと分からなくなっちゃって…」

などなど、大抵チャットでは書きにくい、 都合の悪いことを口頭で押し通したい時に限って、電話が鳴る。


「いつまで待てますか?」に潜むトラップ

この質問、純粋な問いじゃない。すでに遅れることは決定済みであり、「遅れるけど、進行はそちらでなんとかしてね?」という圧力付きのお願いなのだ。

「できるだけ頑張ります」と言っても、それが「間に合わせます!」と翻訳される謎の世界。

モヤモヤは空気感染し、受話器越しに伝染してくる。


言語化を丸投げする「相談」

一番きついのは、言いたいことがまとまっていない人からの電話だ。

毎回、「ちょっと分からなくなっちゃったんですけど…」というフレーズから始まり、話はあちこち飛び、こちらが「つまりこういうことですか?」と整理しなければならない。

しかも、「あ、それはちょっと…でもまあ…ああ、いや…」という謎のリアクション。

Yes か No かどころか、「……」が返ってくる。会話が成立しない。

そして、最終的になぜかこちらが詰められる。

結局、要件の整理、スケジュールの再構築、デザイン案の代案までこちらが提示することになる。

もはや私は制作ディレクターではなく、言語化代行業者である。

本人いわく「コミュニケーションの一環」とのことだが、

どう考えても私に全部言語化させてスッキリしたいだけの感情排出である。


プロジェクトと思考の外部委託

ここまで言っておいてなんだが、私は電話自体を否定したいわけではない。

プロジェクトの委託は確かに契約したが、「考えがまとまらないから電話で喋ればなんとかなるでしょ?」という思考の外部委託を受注した覚えはない。

お願いだから、「ちょっと分からなくなっちゃったんですけど…」と思ったら、まずは自分で一度メモして整理してみてほしい。

それでもダメなら——

プロのカウンセラーに相談してほしい。

それとも、私はあなたの心の整理整頓まで請け負う立場なのか?

どこまで私はサービスを提供したら良いのか、今日も混乱だ。

そして今日もまた、スマホが震える。13時ぴったりに。

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